ターレスの部下は、皆、気のいい人だった。
まず、巨漢のアモンドは、面倒見のいい人で、皆をまとめる手際はお母さんのようだ(といったら、本気で嫌がられてしまったのだけど)この人がいなかったら、この船は次の星に着く前に飢え死にするか、不衛生で病死するに違いない。
ボクの一歳年上のダイーズは、驚いたことにどこかの星の王子様なんだという。髪を一生懸命セットしている姿からは想像もつかない(といったら殴られた)ターレスに憧れて、母星を飛び出してきたのだそうだ。
サイボーグのカカオは、たった一言しか喋らない。戦闘用サイボーグとして作られたから、言語機能がほとんどないのだという。でも、ボクの頭を撫でてくれた。固くて冷たいはずの手が、ボクには信じられないほど温かく思えた。
ボクの膝丈くらいの身長の、一番小さなラカセイは、てっきり一番年少なのかと思ったら、なんと一番年長だった。古代ビーンズ人の化石に、ターレスが気を分け与えて復活させたらしい。信じられない話だけど、実際、ラカセイはもの凄く頭が良く、豊富な知識を持っていた。この宇宙船を造ったのも、ラカセイと、いつもはラカセイの中にいる双子のレズンなんだそうだ。
ターレスが主ということになっているけれど、上下関係はほとんどなくて、部下というより仲間といった方がしっくりくる。ターレス軍団と、彼らが自称するのも頷けた。
ちなみに、なぜクラッシャーターレス軍団なのかというと、
「遺跡の警備の依頼を受けたことがあってなァ。その時に、敵は殲滅させたんだが、一緒に遺跡も壊しちまって」
「それでクラッシャーターレス軍団!?」
敵も味方も壊すから、という理由らしい。よく依頼が無くならないものだ。
ターレスに会ってから、ボクは城下町で遊ばなくなった。お気に入りの古本屋さんも、こっそり通っていた酒場も、前を通り過ぎるだけで、僕は毎日のようにターレスの宇宙船へ通っていた。
最初は本を読ませてもらうためだったけど、軍団のみんなとうち解けるに連れて、本への執着は薄れてしまっていた。見かけに寄らず手先の器用なアモンドの、手作りのお菓子をご馳走になったり、ダイーズと一緒にファッション雑誌をめくったり、カカオやラカセイに宇宙船の構造について学んだりすることが楽しかった。
その頃には、ボクも、うすうす気付いていたのだ。
ターレスが長い外套を纏って外へ出る理由も、宇宙船が空港ではなくこんな寂れた場所に隠されている理由も、考えればすぐにわかることだった。
ターレスは追われる身なのだ。それも同じ、サイヤ人から。
わかっていて、ボクは、見ない振りをした。彼らがボクの素性を探索しないでくれるのだから、ボクも何も聞くべきではないと思った。
─── 嘘だ。本当は、怖かったからだ。聞いて、聞き返されることが怖かった。スーパーサイヤ人の子供だとわかって、彼らが変わってしまうことが怖かった。何もいわずに、聞かずに、知らない振りで過ごしていたかった。
だから、心の隅で鳴り響く警鐘を無視した。
個性的で面白いターレス軍団だけど、一番変わっているのは、やっぱり主のターレスだろう。
彼はとても好奇心が旺盛で、彼の書斎にはいくつもの貴重な文献や遺跡の欠片が置いてあった。正直な話、ボクは、純粋なサイヤ人が自分から進んで本を読むのを初めて見た。威厳や作法を求められる王家は別として、一般的なサイヤ人は書物に価値を見いださない。本なんか読んで戦闘力が上がるか、と、ボクも影でよく言われたものだ。
でも、だからといって彼がサイヤ人らしくないということは全くなかった。戦いを愛し、サイヤ人としての自分に誇りを持っていた。それでいて快楽主義で、何にでも手を出してはすぐに飽きて、おまけに人をからかうのが大好きだった。ボクがダイーズにファッションのレクチャーを受けていたときなんて、何を思いついたのか、物置からどこかの星の伝統衣装を持ってきて、ボクに無理やり着せてくれた。無理やりだ!おまけにその衣装は女性用だったらしく、ダイーズが死にそうなくらい笑っていた。
はっきりいって、ターレスの性格は最悪だと思う。子供っぽくて、わがままで、自分の手に入らなければ破壊するようなエゴに満ちていて、それでいて優しい。
危険だと、どこかでわかっていた。ターレスの近くにいるのは危険すぎると、いつもどこかで警鐘が鳴っていた。
だけどボクは、傍にいたかった。ターレスや、軍団のみんなと一緒にいたかった。その思いの前では、理性はあっという間に溶けてしまって、ボクは自分の足を止めることが出来なかった。
両親と別れてからの11年間、ボクは弱くなっていた。寂しさは心を弱らせる毒だった。ボクは誰かに触れたくて、愛したくてたまらなかった。
この弱さを、ターレスは見抜いているだろう。彼が決して善意でボクを船に入れてくれたのではないことくらい、ボクにもわかっている。ターレスは油断ならない相手だ。
わかっていて、ボクは彼が好きなのだ。どうしようもないほど。
軍団メンバーの設定は、ウィキを参考にしつつ捏造してます〜。