気を消すことだけは上達している悟飯は、戦闘時以外は恐ろしく戦闘力が下がる。宇宙船の中でダイーズと遊んでいるときなど、普通に戦闘力1や2を記録する。そのため、ターレスたちが使用しているスカウターは、レズンが特別に改造し、悟飯の気だけはどれほど小さくても判別できる仕組みになっていた。
 過去に何度か、世間知らずの青年が街中で迷子になったり、迷子になった挙句かどわされて売り飛ばされかけたりしたおかげである。
 スカウターに青く表示された目的地は、焼け跡の中にあった。炎に嘗め尽くされた木々の残骸が、無造作に転がっている中で、悟飯が膝を抱えてうずくまっている。その傍らには、ハイヤードラゴンが慰めるように悟飯に寄り添っていた。
「森で暮らすドラゴンが、宇宙船の中で生きられると思うか」
 悟飯の肩が、びくりと震えた。それでも顔は上げない。ターレスはその頭を見下ろしたまま、淡々と続けた。
「限りのあるスペースで、緑の一つもない。そんな場所にそのドラゴンを入れてみろ。三日で病に倒れるぞ」
「それは ─── ……」
「どうやってストレスを取り除いてやるつもりだ。どうにかなるなんて、甘いことを考えているのか?それとも ─── 」
 悟飯の正面に立つと、ターレスはそっと身をかがめた。黒髪を指で梳いて、その耳に囁いてやる。
「どうにかして欲しいと、ねだるつもりだったのか?」
「………ターレス?」
 ぱちぱちと瞬いて顔を上げた悟飯に、ターレスはからかい混じりの口調でいった。
「なら、ねだってみろ、悟飯。うまくやれよ?お前は甘えるのが下手すぎる」
「えっ…、えーっと、それって、もしかして、ターレス……?」
「どこかの誰かが、ペットを飼わせてくれないなら別れてやるっ!と、泣き喚いたからなァ」
「なっ、なにいって…!泣いてないし、そんなこといってないだろ!」
 ターレスはククッと笑って、悟飯の隣に腰を下ろした。
「戻ったら、レズンに礼をいっておけ。これからあいつは、二週間は不眠不休でペットルーム造りに励むんだからな」
「えっ!?あ…、そっか、バーチャルシステムか!じゃあボクも手伝わないと!」
 いうなり腰を浮かせた青年の襟首を、ターレスは後ろから無造作に引っ張った。立ち上がりかけた悟飯の首が絞まって、ぐっという潰れた悲鳴が上がる。ターレスは意に介さず、そのまま悟飯を地面へ引きずり倒した。
「なにするんだよ!?」
 土と灰の上に転ばされた悟飯の隣で、ハイヤードラゴンも一緒になって抗議の声をあげる。出会って三日もたっていないはずなのに、呆れるほどの懐かれぶりだ。
 ターレスは一呼吸分だけ思案して、それからハイヤードラゴンの頭をぐっと掴むと、そのまま思い切り放り投げた。ハイヤードラゴンの姿が鳴き声とともに空高く遠ざかり、すぐに鳴き声すら聞こえなくなった。
「あああー!!なんてことするんだ!ハイヤードラゴンー!!」
「別に殺しちゃいないぜ。邪魔だったから、少し席を外してもらっただけだ」
「邪魔ってなんの!!」
 きっと睨みつけてくる悟飯を上から見下ろして、ターレスは唇の端をあげた。
「お前が一番に感謝すべきなのは、レズンではなくこのオレだ。そうだろう、悟飯?」
「……ターレス…?あの、もちろん、感謝はしてるけど……」
「残念だなァ、悟飯。オレにはお前の感謝の気持ちが、まるで伝わってこないぜ……?」
 うっそうと微笑みながら告げてやれば、悟飯の頬がさーっと赤くなり、すぐに首までさーっと血の気が引いていった。忙しいことだ。
「か、感謝してます!ほんとにほんとに、すごーく感謝してるよ!!ありがとう、ターレス!」
「それで?」
 笑みを崩さずに続きを促してやれば、悟飯の視線がめまぐるしくさまよった。悟飯はターレスから与えられるものをなんであろうと拒みはしないが、それと羞恥は別物であるらしい。ターレスは悟飯の首筋を撫でながら、その耳元に囁いてやった。
「こういう時にどうすればいいか、何度も教えてやっただろう、悟飯?」
 ターレスの吐息に撫でられた耳が、見る見るうちに赤く染まる。悟飯は浅い呼吸を繰り返して、それから恐る恐る、上体を持ち上げた。触れるだけのキスだ。
 悟飯はターレスの背に腕を回すどころか、肩に触れることすらしない。指先は地面を握り締めたまま、唇だけがターレスの熱に侵される。悟飯らしいといえばあまりに悟飯らしいキスだ。わずかな温もりだけを残して離れていく唇に、ターレスはふっと息を吐いて、そのまま悟飯の唇に噛み付いた。
 強張った体を抱き寄せて、唇をこじ開け、深く舌を絡める。はじめはきつく地面を抉っていた悟飯の指先が、徐々にほどけていくのを視界の端に捕らえて、ターレスは内心で笑った。いつもよりも長く快楽の糸で縛り付けておけば、力なく解けた指先は、やがて縋るようにターレスの腕に触れた。
 あえかに零れた吐息は、すでに悟飯の限界を告げていて、溶かされた唇は許しを請うていたが、ターレスはそれらを無視して悟飯を嬲った。見返りを一切期待せず、ターレスにどう思われようと気にしないような所のある悟飯だが、その体のほうはすでに、与えられる快楽に侵食されている。
 侵されて、馴染んで、慣れて、ドロドロに溶けていく悟飯を見るのは楽しい。おっとりしているが、人一倍自制心も強い悟飯が、一番素直になるのは抱かれているときだ。それも、理性が壊れるほどにじらされて、嬌声を抑えられないほど強い快楽に苛めぬかれたあとが、一番素直だ。素直に喜んで、素直に欲しがって、素直にこちらに縋りつく。正気に返ると死にたくなるらしいが、ターレスにすれば、そこまでしないと素直になれない面倒くさい性格をしているのが悪いというものだ。もっとも、そういう面倒くささも含めて、悟飯のことを気に入っているのだから、特に改善させる気もないのだが。
 口付けを終わりにしてやっても、浅い呼吸を繰り返す唇は、薄く開かれたままだ。耐えるようでいて、そのくせどこか物足りなそうな眼をする悟飯に、ターレスは薄く笑った。そして、その溶けたままの口に、自分の指を無造作に入れる。悟飯は抵抗する事もなく、ただきゅっと眉根を寄せた。すでにさんざん嬲られた咥内は、指先でなぞってやるだけで震える。悟飯はターレスの指をくわえたまま、荒い息を吐き出して、両手でターレスの腕に縋っていた。
 ククッと笑って、ターレスは悟飯の口から指を引き抜いた。悟飯はほっとしたように肩の力を抜きながら、それでもどこか滲んだ眼でターレスを見上げてくる。欲望の蛇に舐められた体は、そう簡単には収まらないのだろう。このまま最後まで続けても良かったのだが、なにやら敵意むき出しで向かってくる気配を感じてはそうもいかなかった。美味しいところで邪魔をされては、ハイヤードラゴンの一匹くらい、うっかり殺しかねない。
「残念だが、タイムアウトだ」
 ぼんやりとこちらを見上げる悟飯に、全力で飛び戻ってくる生き物を指し示してやる。すると悟飯の顔がパッと輝いて、いそいそと自分の下から抜け出そうとした。先ほどまでの痴態を忘れたかのような姿だ。
 ターレスは、ごく一般的な礼儀として、悟飯を後ろから抱き寄せると、その耳元に唇を寄せた。
「続きは船に戻ってからだ。わかったな?」
 承諾以外は求めていない声で囁けば、悟飯は耳まで赤く染めて、こっくりと頷いた。













エロ格好良いレタスを、というお言葉を頂いたので、エロスを頑張ってみました!今までで一番そういう感じになった気がする!当社比だけど!
アンケートにご協力ありがとうございました!感想などいただけたら嬉しいです!