「気に入ったぞ!持ち主に尋ねて、同じものを探させよう」
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言仁はいち、にの、さんっと勢いをつけて、布団の上に飛び乗った。突然の衝撃に、布団の中の住人が、ぐえっと潰れたような声をあげる。
「将臣殿!朝であるぞ!起きるのだ!」
「……おまえなー。今軽く内臓が口から出そうになったじゃねえか……」
「今日は釣りを教えてくれる約束であろう。早く行かねば、いいぽじしょんが取られてしまうといったのは将臣殿だぞ!」
「あー、うん、そうだな。わかってる、わかってるからもう少しだけ寝かせてくれ……」
「起きるのだー!」
将臣の上にまたがって、ぐいぐいと肩を揺さぶる。だが将臣は入り込んでくる朝日にまぶしそうに眼を細めて、布団にもぐりこんでしまった。言仁はむうっと口を尖らせて、傍らでおろおろしている六代を呼んだ。
「そなたも手伝ってくれ。将臣殿を起こすのだ」
「ですが帝、いえ言仁様……。将臣様は…、昨夜もお帰りが遅かったようで……、その、隣村とのお話を、それで、あの……」
「 ─── 有川、起きているか。いま重衡より書簡が……、言仁様?」
するりと、猫のように音もなく現れたのは知盛だった。知盛が首を傾げて、何をなさっておいでです?と尋ねてきたので、言仁は胸を張った。ついでに両腕も広げた。
「将臣殿を起こしているのだ。いかに知盛殿でも今日は駄目だぞ。将臣殿には私との約束があるのだ」
「さようでございましたか……」
知盛はおかしそうに微笑んで、ひょいと六代を抱き上げた。ひゃあと悲鳴を上げた六代を無視して、そのまま将臣の上に降ろす。そしてその後ろに自らも腰を降ろした。
将臣の上に、順番に、言仁、六代、知盛である。胸の上から太ももまで乗っかられて、将臣が呻かないはずがない。
「知盛、てめぇ…っ!」
「起きるのだっ!はやく私に釣りを教えてくれ」
「もっ、申し訳ございません、還内府様…っ!」
「ああ、私のほうは、言仁様の御用がすんでからで構いませんよ。順番をお待ちしましょう」
振り向けば、知盛は優しく微笑んでそういった。さすがは知盛殿、話が分かると、言仁は思った。
「そなたら、何をしておるのだ?」
「お祖父様!今日は釣りを教えてもらうので、将臣殿を起こしているのです!」
「 ─── 申し訳ございませんっ!!」
「言仁様が先約だそうですので、順番を待っているのですよ」
「俺の上で待つんじゃねえ!!清盛、いいところにきた!助けてくれ!」
顎に手を当て考え込んでから、清盛はくくっと微笑んだ。こうして微笑まれると、知盛殿とよく似ておられるなと言仁は思った。
「では我も順番を待つとするか」
「清盛ぃ!!」
こうして将臣の上には、前から順に、言仁、六代、知盛、清盛となった。内二人が子供で、一人が子供返りした身でも、重くないはずがない。知盛だけでも十分重い。
将臣はとうとう降参した。
「わかった。起きる、起きるからどいてくれ。圧死する」
「あっしとはなんだ?」
「申し訳ございませんっ!すぐに、おりますので…っ!」
「別に六代一人のっていたところで、重いわけがなかろう。この程度で音を上げるとは、なまっていらっしゃるのではないですか、兄上?なんなら鍛えて差し上げましょうか」
「うむ、いかに平和な暮らしとはいえ、鍛錬を怠ってはならぬからな。知盛に稽古をつけてもらうといい。我も久方ぶりに、そなたらの剣を見たいしな」
「六代一人じゃねぇから重いんだろうがァ!つーか知盛、お前が重いんだよ!言仁も六代もそんなに重くねえけど、お前だけで三人分くらい重いんだよ!あと何気に清盛も重い!なんでわざわざ体重かけるかなっ?あんた浮かべるだろうが!」
「将臣殿?どうされたのです?」
しずしずと現れたのは尼御前だった。将臣の上に団子のようになって乗っかっている家族一同を見つけて、おやまあと、口元に手を当てた。
「清盛殿までご一緒になられて、なにをなさっておいでですか」
「良いところに来たな、時子。こちらへこい。あいておるぞ」
そういって清盛が指し示したのは、将臣の足首のほうだった。たしかにかろうじて一人座れるくらいはあいている。
「いやいや清盛、そこは座るスペースじゃねえから。尼御前、助けてください」
哀れっぽい声で、将臣が助けを求める。尼御前はころころと笑った。
「では、失礼して……」
「おばあさまも座るのか!ではもっと前に詰めなくてはな!」
「い、いけません、言仁様!それ以上前に行かれては……、そこは首です!」
「頑張れよ、有川」
「時子、足元に気をつけてな」
「ええ、大丈夫です。ほほ、今日は皆どうされたのですか?」
「将臣殿と釣りに行くのです!」
「私は、言仁様からお誘いをいただいて、……申し訳ありませんっ!」
「重衡から、あちらの件で書簡が届きましたので。有川、あとで時間を作れよ」
「我はたまたま通りかかったのだ」
「ちょっ、まて、お前ら、マジで、マジで重い!!跳ねるな言仁!昇り降りすんな六代!体重かけんじゃねえよ知盛!頼むから浮いてくれ清盛!あっ、尼御前はむしろくすぐったいんで!座っていいですから!」
将臣はぜえはあと叫んだが、もちろん誰一人降りなかった。子供組は当初の目的を忘れかけているし、大人組は確信犯だ。追い詰められた将臣は、とうとう悲鳴を上げた。
「経正っ、惟盛っ、どっちでもいいから助けてくれ!」
その後、団子家族プラス下敷き一名は、怨霊の力でもって即座にその場に駆けつけた二名によって、こってりお説教されたという。
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帝GOODEND(南の島END)