ま、どっちにしろ、我輩から見たら可愛いものでありますよ。この世で一番難しいものはガンプラ!
 そのガンプラ博士と名高い我輩からすれば、鈍いというよりありゃそういう考えが頭ん中にないんだろうなぁっちゅう赤ダルマも、ある意味「なにもしないことをしているんだ!」と主張しかねないところがオソロシー天才科学者も、可愛いものであります。
 そんなことより見て見て!ハァァ、このゾックのまれに見る輝き…!やはり俺はガンプラ博士、いやガンプラ戦線司令官とでもいおうぼき。
「ぼき?………っギャァアアアアアアーーー!!!我輩の、我輩のゾックが、ちゃぶ台返しを喰らったエッフェル塔のようにィイイイイイ!!!なにすんじゃゴラァ赤と黒オオ!!お前らの足下で俺の命が土に帰りかけちゃってるじゃねェかアアア!!!!」
「ケロロ!貴様もなんとかいえ!!」
「軍曹さんは僕と同じ気持ちですぅ!ね、軍曹さん!?」
 赤いのとタママが我輩に顔をぐいぐいと近づけてきて喚いた。いや、我輩の言いたいことは一つなんだけど!「てめェら足下見ろや」のただ一言なんだけど!そして我輩の心は今まさに嘆きと悲しみに満ちているんですけど!!
「それにボク、知ってるですぅ。クルル先輩があのイヤな周波音を使い始めたのは、ギロロ先輩がお腹にケリを入れたからなんですぅ。あのケリは凄かったですぅ!無防備なところをやられたら、ボクだってお菓子が食べられなくなるですぅ。クルル先輩が対抗手段を考えるのも当然ですぅ」
「貴様、話を捏造するなァ!冬樹も信じるんじゃないぞ!?あれはクルルが先にやったんだ!アイツが先に耳を掻きむしりたくなる音を出してきたから、俺が強制的にとめただけだ!それまでも、友好的ではなかったかもしれんが…、少なくとも暴力をふるったことなんぞなかったんだ。あんなラボにこもりきりの軟弱なヤツを殴れるわけがないだろう?なのに、クルルの奴ときたら、あんな嫌な音を出しおって…!なにが気に入らなかったのかしらんが、言いたいことがあるなら口でいえというんだ!」
「それで蹴ったの?」
「手加減はしたぞ。それに、意見もちゃんと聞いてやった。なのにヤツときたら、なんと答えたかわかるか!?」
「うーん、なんだかすごく想像がつくよ…」
「嫌がらせだと!!!まったく、ふざけおって!!」
 ふざけるなというのはまったくもって我輩の台詞なんだけど、なるほどねえ。
 タママから見たら、ギロロが一方的に突っかかっているとしか思えなかったんでありましょうな。
 無理もないであります。
 まだあの頃は、クルルが半分くらい腐ってたもんね。腐った林檎みたいに、ぶよぶよと膿んでたであります。

 でもあれ、照れ隠しなんだよね。

 ギロロはあの時、自分がクルルに渾身の一撃を食らわしちゃったことなんて、全然気づいてないんでありましょうなァ。つくづく頭の固いヤツであります。
 お前に『感謝する』っていわれたときのクルルなんて、死にそうな顔してたのにねぇ。死にそうっていうか、泣きそうっていうか、ひどい顔でありましたよ。あのクルルがさ。
 まぁ、それで嫌がらせをしちゃうところがクルルなんだけどね。素直に喜べばいーのにねェ。


「それに、あのドアベルだって!昔はあんな変な音じゃなかったですぅ。あんなブキミな音になっちゃったのは、ギロロ先輩がドアベルにミサイルを撃ち込んだからじゃないですか〜」
「だから、話を捏造するなといっているだろう!!アイツのラボにはそもそも呼び鈴なんぞなかったんだ。客に気づけば開けるが、気づかなければ開けないままだ。客人の階級に関係なくな。だから、せめて呼び鈴くらいつけろとアイツを説得して、半ば無理やりつけさせたんだが………」
「なるほどね、付いたのがあのホラー音だったんだ?」
「何度破壊しても、クルルはあれしか付けんのだ。まったくアイツは!あんな嫌がらせばかりしているから降格処分になんて合うんだ」
 何回壊したって、そりゃ、あれしか付けないでありますよ。
 バカだねー、赤男爵は。あれが誰のために付いたのか、全然わかんないでありますな。
 どんな不気味な音だっていいはずなのに、なんでいつも週間ホラー映画ベスト10から選曲されてるのか、いっぺん胸に手を当てて考えてみた方がいいよ、ギロロは。
 あ、でも、考えた結果「俺への嫌がらせだな!?」とか言いそうで怖い!
 我輩そっちの方がよっぽど怖いであります!

「でもぉ!クルル先輩のあの笑い方は、どうなんですか〜?昔はあんな、嫌な笑い方しなかったのに、ギロロ先輩と話すようになってから、ああなっちゃったじゃないですか〜」
「………そうなのか!?」
「何いってるですぅ。まさか、生まれつきあんな笑い方だと思ってたんですか〜?」
「いや、それは…。ただ、ほかの笑い声を聞いたことがなかったからな。てっきり、昔からああなのかと…」
「違いますぅ。昔は〜……あれ?軍曹さん、クルル先輩の笑い方って、昔はどんなでしたっけ?」
 だからそこで我輩に振らないでってば!
 うう、二人して期待に満ちた眼でこっちを見ているであります。我輩にどうしろと!?
「エー、ソーネー、モノシズカーな笑い方でありましたよ、ええモー、ホントニー」
「軍曹さん、あからさまに眼が泳いでますぅ」
「物静かだと?クルルがか?」
 チクショウ、二匹して疑いの目を向けやがってェ!
 お前らねェ、我輩が本当のこといったら困るんだからね!特に赤!
 ギロロに会うまで笑ったところで薄ら笑いで、声に出して笑ったことなんかないんじゃないの。クーックックックってお前に向かって嘲笑したのが、あの精神泥沼研究者の、最初の「声に出した笑い」ってヤツだったんでしょ。
 ──── なんていっても、信じないでありましょうなァ。うん、困るとか以前に、信じないよね。
 だいたい、クルルの本当ほど、ギロロにとって理解できないものはないと思うんでありますよ、我輩。ときどき、アンタらほんとに同じケロン人?って、聞きたくなっちゃうもんね。
「アー、アー、我輩そういえばお風呂掃除当番なのであります!しまった!今すぐゆかねば、夏美殿に殺されてしまうッ!」
「おいコラ、ケロロッ!」
「大変だァ〜!」
 いそがねばーと、力のこもってない叫びを上げて、部屋を飛び出した。後ろで赤ダルマがなんかいってたけど、我輩、そんなバカバカしい質問には答えられないでありますよ。


「軍曹、待って、僕も行くよ」
「冬樹殿!冬樹殿は洗い物当番でありましたな〜」
「うん。ねえ、軍曹」
 冬樹殿が、冬樹殿独特の穏やかな顔で、我輩に呼びかける。我輩は裏のない笑顔で、はいはい何でありましょうと、答えた。するとやっぱり冬樹殿は、冬樹殿しか持ち得ない穏やかな顔で、さっきの話は本当なの?と尋ねた。
「ま〜、嘘じゃないでありますよ」
「そっか。じゃあクルルは、伍長のことがすごく好きなんだね」
 我輩は、思わず言葉に詰まったであります。
 冬樹殿は、別に、何か特別なことを言ったという感じはなくて、まるで今日のご飯はオムライスだよというのと同じくらいの自然さで、だからよけいに言葉に詰まった。
 あァ、スッゲー、スッゲーや冬樹殿。夕ご飯と同じレベルでスッゲーこといったよこの人。
 スッゲーや冬樹殿。
 クルルのあの絶望的な諦めを、救いようのないもがきを、言葉にするなら、それは確かに。

 ──── 好きと、いうのかもしれないでありますなァ。









 クルギロというよりクル→ギロでした、やっぱり。曹長ゴメン…!