変化を恐れるのは老人だけだ。
変わることを拒み、生温い現状が続くことだけを願ったときから、生物はみな
年老いる。
ああ、なのに。
なのに、俺が願っているのは。
この俺が、トラブル&アクシデントを信条とするこの俺様が、願っているのは
。
鞭を恐れる奴隷のように怯えているのは、手負いの獣のように凶暴に望んでい
るのは。
この生温い現状の、現状維持だ。
(なぜなら俺はこれ以上を望みはしない)
たとえばあの無邪気な振りだけは天下一品な隊長のように、信頼を寄せられる
ことも。
たとえばあの清々しい花のようなペコポン人の女のように、命をかけた思いを
寄せられることも。
俺はごめんだ。そんな風に見られることは、想像したくもない。たとえ夢の中
で何度それを繰り返したとしてもだ。
俺は、あの眼が、そんな風に特別な感情を持って俺を見ることに、耐えられや
しないんだ。
(見ろよこの俺はこんなにもちっぽけだ。ウジ虫よりも醜くて愚かだろうよ。
俺はあの男をいったいなんだと思っているんだか。ああ、馬鹿馬鹿しい)
けれども俺は、あの人が、ただの仲間として俺を見ることで十分なんだ。それ
以上は怖ろしい。俺はたぶん耐えられない。目もくらむような幸福と、腹の底
からわき上がる恐怖に耐えられない。
耐えきれずにきっと。
(だから、俺はあんたには触れない)
この先何があろうとも。俺は決してあの人を慰めないし、あの人を優しく抱き
しめるなんて愚かな真似もしないだろう。
(──── だけど、だけどなァ)
パネルをよどみなく愛撫しながら、口を歪ませて笑う。
だけども、いいか、よく覚えておけよ。俺の望みは現状維持だ。
これ以上は望まないが、これ以下は許せねぇ。これがどれほど年老いた望みだ
ろうと、構うものか。
(俺様の生温い幸せを壊そうってつもりなら、なぁ、逆に壊されても文句はね
ぇよなァ?)
全力で排除する。身を守る程度じゃ飽き足らない。八つ裂きにして、精神崩壊
を起こすまで叩き潰す。
それが力を尽くすってことだろ?
(あァ、だけど、もしもこの幸福を壊そうとするのがあんただったなら)
俺は、なすすべもなく、絶望に落ちるだろう。