収賄の容疑を肯定したギロロに、ケロロは顔色をなくした。
「そんなはずないであります!ギロロがそんなことするはず…っ!!」
「事実だ。前線を離れて久しいお前にはわからないだろうが…、この数年で軍
事政策は大きく転換したんだ。軍事費は削られ、補給もままならず、だが戦争
は終わらんままだ。部下に戦えと命じることはできるが、飢えて死ねとはいえ
ん。だから金を受け取った。私的な目的に使ったことなど一度もないぞ」
「……それを、証明できるものはあるでありますか?」
「いや、ないな」
「ギロロオオオ!!!アンタってどーしてそうなのよ!?どーして後先考えな
いの!ネエ!!どーして物証を用意しておかないのオオオ!!!」
「俺が金を受け取ったことは事実だ。なにも言い訳にはならん」
「このバカ赤ダルマがあああ!!!」
ギャッシャー!!と奇妙な雄叫びを上げて頭をかきむしるケロロに、ギロロは
ぽりぽりと頬をかいた。
「俺の処分は、査問委員会に一任する。だが、クルルの件は別だ。あいつはな
にも知らないんだ。これは俺が一人でやったことだ、共犯者なぞいないからな
、ケロロ」
緑色の幼なじみ、もとい査問委員会委員長ケロロ軍曹は、非常に嫌そうな顔を
して、溜息をついた。
領収書のデータは、毎回律儀に渡される。
だがギロロは、書類整理というものが大の苦手であったので、一人の部下に見
せた後は、そのまま削除してしまうように命じていた。
いつものように渡されたデータを、適当に眺めて、ギロロはそれをそのままク
ルルに渡した。
「─── クルル、それ、全部消してあるよな?」
「今さらなに聞いてんだよ、オッサン。消せっていったのは、アンタだろ?」
「消してあるならいいんだ。…俺は今度、査問委員会に呼ばれることになった
」
「へえ、そりゃ楽しそうな話だなァ」
「お前は無関係だ。いいな。だれかに聞かれても、なにも知らんといって通せ
」
クルルは、うっそうと笑った。
「そんなの、当たり前だろォ?俺はなにもしらねェよ、アンタのことなんか」
────ああ、なのになぜ。
(無関係を通せといっただろう!)
ギロロは驚愕に目を見開いて、後方に立つクルルを見つめた。
査問は、予想通り、私費には使っていないという言葉の真偽が問題となった。
証明できない事実で、判断を下すことはできない。となれば、確かなことはた
だ、収賄を受けたという事実だけだ。
ギロロは大人しく椅子に座り、処分が下される時を待っていた。
覚悟はとうに決まっていた。ケロロには怒られるだろうが、それでも罪は罪だ
。正しく裁かれなくてはならない。
なのになぜ。
「証拠なら、ここにあるぜぇ」
ああ、くそ、なのになぜ。無関係を通せといったのに!
「そこの人が、私的流用を一切行わなかったって証拠が、このデータにすべて
入ってるんだなぁ、クーックックックッ」
「クルル、貴様!」
「げ!ギロロ、大佐をつけて大佐!一応階級上なんだから!」
「隊長も、ギロロ中佐って呼んだほうがいいんじゃねぇの?」
「ふざけるな!そんな証拠、俺は認めんぞ!おい、聞いているのかクルル──
─っ大佐!」
「アンタが認めよーと、認めなかろーと、関係ねえなあ。これは立派な、法的
根拠ってヤツだぜえ」
「俺は消せと命じたはずだ!!」
「なにいってんのギロロ!?」
「前にもいっただろォ?相手がすっかりいい気になったトコロで、一気に突き
落とすのが最高にクールなんだよ。どうだい、突き落とされた気分は?」
「最悪に不快だ!!」
椅子の背に手を叩きつけて、ギロロは傍聴席に立つクルルを睨み付けた。クル
ルはニヤニヤと、これ見よがしな笑みを浮かべていて、ギロロは思わずライフ
ルを次元転送しそうになる。
だが、その赤い背中に冷水を浴びせるような、呆れきった声が響いた。
「……ねえ、クルル大佐。でもそれってさあ、一応、命令違反だよねェ?」
「だから、なんだい。隊長」
「ま、まて!クルル大佐は無関係だ!!彼は俺を庇おうとして」
「あ〜黙っててそこの人。命令違反を犯して作ったその証拠に、本当に法的能
力はあるんでありますか?」
────クルルの声が、あれほど静かに澄んでいたのは、はじめてだったなと
、後でギロロは思った。
「ある。俺の首をかけてもいい。このデータはその人の誇りを証明する」
そうして、クルルはいつもの陰気な笑みを浮かべていった。
「いっただろ?俺は嫌がらせには、命をかけてるんだぜぇ」
海堂 尊著「ジェネラル・ルージュの凱旋」のパロ。