哀れだなあと思う。
自分にだけは哀れまれたくないだろう相手を、わかっていてケロロは哀れだな
あと思う。
自分がぎっくり腰で入院中に、クルルが立派に陰険に隊長代理を務めたと聞い
ても、ケロロは別に驚かなかった。
大使に嫌がらせをしなかった代わりに、隊員達をいびりたおしたと聞いても、
まあそんなもんでしょとしか思わなかったし、隊員達を苛め尽くした代わりに
、大使には外面を守ったと聞いても、ああなるほどねえとしか思わなかった。
「クルルの奴は、あの性格の悪ささえなければ、貴様の数倍は立派な隊長にな
れるんだがなあ」
「え〜、性格悪くないクルル曹長なんてキモイでありますよ。ギロロの兄ちゃ
んが紫じゃなくて目に優しい水色になるのと同じくらいキモイ」
「どういう例えだ、それは!まあ…確かに似合わんだろうが、しかし本当に立
派だったんだぞ。俺たち以外に対しては、礼儀正しく、慎み深く、相手の非礼
にも腹を立てず!クルルが隊長の方が地球侵略が進むんじゃないかと、一瞬思
ってしまったくらいだ」
哀れなものでありますなあと、ケロロは思う。
もちろん、口にも顔にも出さないけれど。目も手もガンプラに集中したまま、
頭だけ全く違うことを考える。ケロロには息をするのと同じくらい簡単なこと
だ。
「じゃーさー、赤ダルマは、クルルが非の打ち所のない軍人様だったらどーす
んの?」
「どうするって……そうだな、むろん、敬意を払って接するだろうな」
「ハイ、失格ー」
「なにがだ!?」
あわれだ。
ギロロのコンプレックスは憧れの裏返しでもあることを、ケロロは知っている
。ギロロは戦場以外において有能ではないから、戦場以外において有能な人に
憧れるし、相手の非礼を受け流すなんて大人な対応は取れないから、それがで
きる人に敬意を払う。
だけど有能というのは、一種の器用さだ。
だから、その気になれば、ケロロやクルルはいくらだって有能に振る舞える。
タママにもできるかもしれない。
でもギロロにはできない。できないから、有能というのは何かとてつもなく凄
いことのように勘違いして、勘違いの分だけ大きな尊敬を抱く。
「赤ダルマに敬意を持たせるなんてさァ、赤子の手を捻るより簡単であります
よ」
「ケロロ、貴様、さっきから俺に喧嘩を売っているのか!?」
「んなわけないでしょ。我輩はただ頭が痛いなぁと嘆いているんでありますよ
」
「嘆くって、なにをだ。ちっとも進まん地球侵略についてか」
「ソーネー、同じくらい進まない侵略活動についてねー。ギロロはさァ、相手
に敬意を持たれたくなかったらどーする?」
「敬意を持たれたくなかったら?」
「そ。でも自分を認めて欲しいの。どーする?」
「………難しいな。何をしても、逆効果になりそうだ。しかし、何のためにそ
んなことをするんだ?なぜ敬意を持たれてはいかんのだ?」
哀れだなァ。
そんなの愛されたいからに決まってるのにねェ。ぐちゃぐちゃのどろどろにな
りたいのに、敬意を持ってラインを引かれたら手も足も出ないでありますよ。
哀れだなあと、つくづくケロロは思う。
クルルの強みは、何一つギロロに通じない。全てが敬意と尊敬に直結する。だ
からクルルは、有能になることさえできない。
あわれだ。
ギロロを動かしたいなら、本当は有能さなんて全く関係がないのに。心と言葉
だけあればいいのに。
なのに、それをいつまでも受け入れられないあの天才科学者は。
クルル隊長代理になるの回のコネタ。