HAPPY BIRTHDAY!!




「新年早々休暇を返上して出勤したのは、ほかでもない『アイスバーグさんの誕生日についての緊急職長会議』のためだっつうのに!」
「長いタイトルじゃのう」
「センスもないしな」
「なんでお前らがいやがる、カク、ルッチ!政府の犬が、とっととエニエス・ロビーに帰れ!」
「相変わらずバカだな、貴様は。職長会議に職長がいてなにが悪い」
「バカなのはてめェだ、ハト野郎。てめェらはとっくに首になってんだよ、当たり前だろうが」
「うむ、わしももちろんそう思っておったんじゃが、不思議な話を耳にしてのう。なんでも二人の職長と美人秘書は、里帰りをしておるだけじゃとか…それなら里帰りから帰ってきても、なんの不思議もないのう」
「浸ってるところを邪魔して悪いが、その話には続きがあってな。親の具合が悪くなって里帰りした職長二人は、そのまま家業を継ぐことになったんだよ。辞表もちゃんと俺が代筆しといてやったから安心しろ」
「なっ、なんてひどいことをするんじゃ!横暴じゃぞ、パウリー!」
「お前らにだけはいわれたくねえ」
「ちなみにその”話の続き”は、アイスバーグさんの決定なんだろうな、もちろん?」
「暗殺者の処遇なんざ、聞くまでもねえな」
「ほお…、なら、カリファの処遇だけ我々と違うのは、一体どういう理由があってのことだ?まさか、女だからというだけでアイスバーグさんバカのお前が、暗殺者を職場復帰させるわけはないよなァ?ここにいない誰かの命令あってのことじゃないのか?」
「全然違うな。カリファは俺からのバースディプレゼントだ」
「………なに?」


「この間な、アイスバーグさんが病み上がりなのに夜遅くまで仕事をしていたから、俺は『休んだほうがいいですよ』っていったんだ。そしたらアイスバーグさんは『そうだな、一息つくか』っていってな。俺は一息じゃなくて朝まで休んで欲しかったんだが、ああいうときは言っても無駄なんだよな。あの人は絶対、俺のいっている意味をわかってて、知らねえ振りをしてるんだから、まったく困った人だよ。まぁそれで、俺が紅茶を入れて差し上げたんだが……なかなか、上手くいかねえもんで、つい『カリファに習っときゃよかったな』なんてつぶやいちまってよ。カリファのことはあれ以来、タブーってほどじゃないが、簡単には口にしないでいたからな。俺もマジであせっちまって、それ以上なにもいえなくなるし嫌な汗は滝のように流れるしで、相当狼狽えたんだが、アイスバーグさんはこう、懐かしむみたいに笑ってな。『そうだな』って頷いたんだよ。『そうだな、カリファみたいに有能で気の利く美人秘書はそういねえからな。俺も習っとけばよかったよ』ってな。だから俺は決めたんだ。今度の誕生日にはカリファをプレゼントしようと」


「うおおお!!!そりゃなんか違わねえか!!!?アイスバーグさんはお前に気を遣ってそういっただけだろお!!!」
「おめェ、フツー、人間を誕生日プレゼントにするか…?しかも女だぞ、一歩間違えたら犯罪じゃねえか…」
「うるせえぞ、そこの二人。お前らだって新しい秘書が早く欲しいっつってたじゃねえか。カリファなら慣れてるし、設計図が灰になったからには命を狙う理由もねえ。どこに問題があるんだよ」
「どこにって、どこにもかしこにも……、いや、いい。社長が絡んだときのおめェにいうだけ無駄だった」
「問題ならあるぞ!なんでカリファはよくてわしは駄目なんじゃ!わしかてもうアイスバーグさんを狙う理由はないんじゃ。さっさと職場復帰させんか」
「そもそも、だ。なぜお前が人事まで仕切ってる、パウリー?俺はおまえの部下じゃないし、部下になる気もない。お前の命令に従う義務が、このウォーターセブンのどこを探せば出てくるんだ?」
「あいにく、アイスバーグさんは新しい設計図に取り組んでいるところだ。政府の犬の相手をしてやるほど暇じゃない。それに、俺はこの件に関しちゃ後始末を任されてるんでな、いくら職長の席が空いたからって殺し屋を雇う気はねえよ。カリファだって、アイスバーグさんが望まなきゃ、二度とこの島の土は踏ませてねえよ」
「ちっ…、なんて心の狭い男じゃ。こうなれば、バースディプロジェクトでキメるしかないかのう…」
「バースディプロジェクト?」
「おい、なんだそれは。俺も聞いていないぞ」


「もちろん、わしをアイスバーグさんにプレゼントする計画じゃよ。むろん、おぬしのように自分にピンクのリボンを付けてプレゼント、などとゆう気持ち悪い手はつかわんよ。わしはもっとアイスバーグさんの弱点を攻めていくからのう。まず、3日が終わる直前になって、あの人の前に姿を現す。そしていうんじゃ、『そんな資格がないことはわかっとるが、どうしても、アイスバーグさんに会いたかったんじゃ…』とな。あの人は驚いた顔をしながらも言葉を探すじゃろう。そしてわしはそんなあの人の手にそっと触れて、『もう一度、チャンスをくれんかのう…』と呟く!アイスバーグさんは当然、戸惑うじゃろう。すぐには受け入れがたく思い、それが顔に出てしまうに違いない。そこでわしはにこっと笑い、『冗談じゃ』と手を離して、去っていく振りをするんじゃ!ここまで来ればアイスバーグさんは必ず引き止める!あの人は年下に弱く、頼られると弱く、さらに失うことが大嫌いな人じゃからな!まさに三重苦じゃ。『カク!』と慌てて引き止めるあの人と、泣きそうな顔で振り向くわし!そして抱き合う二人じゃ!ここで雪でも降ってくれれば最高じゃな!」


「こんのバカヤロウが!年少組だと思って調子にのってんじゃねえぞ!!俺はピンクのリボンなんてベタな手はつかわねえ!!」
「うォイ!?!怒るところはそこかああ!!?!」
「寒イボが立ちそうな妄想の割りに、アイスバーグさんのツボを押さえてるところがむかつくなー」
「ツボってなんだ…!なんでおめェはそんな冷静なんだパウリー…!あの妄想バカは、どう考えたってアイスバーグさんの危機じゃねえのか!」
「別に、危機じゃねえよ。誕生日のアイスバーグさんを、12時近くになったくらいで独り占めできると思ってる辺りからして、甘すぎる」
「まったくだな。外的要因を計算に入れていない計画なんざ、成功するわけがねェ」
「なんだ、自分は違うとでもいいたげじゃねえか」


「当たり前だ。俺をこんなガキと一緒にするな。こういう計画はな、まず与えられた状況を最大限に利用することから始まるんだ。この場合でいえば、俺があくまで”里帰り中”なことだな。まず、3日の朝に、海賊が突然この島を襲い始める。ちなみに船長は一億ベリーの首だ。弱すぎもせず強すぎもせず、ちょうどいい連中を捜すのはなかなか手間だったが、成功のためには妥協は許されない。ここ数週間は寝る暇も惜しんでこの海域に誘導してきたんだぞ。まあ、大工達も抵抗するだろうが、まず勝ち目はないな。1番ドッグは抑えられ、アイスバーグさんの命も風前の灯火…!そこに颯爽と駆けつける一人の職長!当然島中の人間が歓喜して俺を迎えるだろう。だが俺はあくまで海賊を捕らえに来た風を装い、アイスバーグさんに背を向ける。アイスバーグさんは内心ではそのままいなくなれとでも思っているだろうが、あの人の立場が俺を引き止める…。そして俺は職場復帰し、あの人は責任と憎悪の間で揺れ動く…!苦悩するアイスバーグさんの顔は、さぞ美しく歪んでるだろうな。フフフ…、最高だ。楽しみすぎて怖いくらいだぜ。早くあの人に俺をプレゼントして差し上げてえな」


「相変わらず変態じゃのう…。タイルストンがでかい図体を硬直させてるのが目に入らんのか、おぬしには。免疫のあるわしでも正直ドン引きじゃぞ。どうして素直に好きといえんのじゃ」
「あーのーなー、変態でもSMでもなんでもいいがてめェ一人でやれ。ウォーターセブンを巻き込むんじゃねえよ!巻き込むならエニエス・ロビーにしろ」
「ほざけ負け犬。俺の計画は完璧だ。誰にも邪魔はさせん」
「とりあえずわしは邪魔するがな」
「仕方ねえ、カリファにも頼んでおくか。ああ、カク、きっちりそこの変態の計画を潰せたら、職場復帰な。てめェは普通に職場復帰させた方がまだマシな気がする」
「おお、話が分かるのう、パウリー!」
「いい度胸だ、バカヤロウどもが。ククク…俺の邪魔をして生きて帰れると思うな…」






「なぁ、タイルストン、おめェはなにをプレゼントするんだ?」
「酒だ!毎年かわりばえしねえけど、アイスバーグさんは喜んでくれるしな!!がはははは!!」
「いいと思うぜ。普通が一番だ…!代わり映えしないくらいが一番いいに決まってらァ!つーか人間はプレゼントするものじゃねええええ!!!」












社長の誕生日祭に寄せて書いた話です。ルルは常識人なイメージがあって可哀相な人になってます。毛が伸びるくらい、白薔薇服に比べれば全然まともだよ…!