三匹の子豚
昔々あるところに、仲のよい三匹の子豚の兄弟がいました。
長男はちょっと手が早く、次男はちょっと怠け者、三男はちょっと胃腸の弱い子豚でした。
あるとき、お母さん(特別出演:和美)が言いました。
「あんた達、いいかげん大きくなったんだから独り立ちしなさいよ!」
腰に手を当てて怒鳴られて、三匹の子豚は逃げだ・・・・いえ、独り立ちすることに決めました。
長男は藁の家、次男は木の家、三男はレンガの家を作って暮らし始めました。
そこに、狼がやってきたのです。
「何で俺が狼なんだ・・・・・」
ミスキャストじゃないか、と狼さんは独り言を言いました。
黒い髪に黒い目の、耳と尻尾を居心地悪そうに撫でながら、狼さんは歩いています。
狼さんの名前は坂本といいます。
彼はとてもおなかがすいていて、三匹の子豚を食べにきたのです。
「食えるかっ!何で俺が狼なんだー!!」
ぶつぶついいながら狼さんは歩きます。
狼さんはとても凶暴で、みんなに恐れられていました。
「そりゃ葛西だろ・・・」
もちろん仔豚達も、お母さんに狼のことは聞いています。
狼さんを仔豚達はとても怖がっていました。
「嘘つけ。あいつら(主に葛西)が俺を怖がってるところなんて、見たことねえよ」
だから仔豚たちはとても用心していたのです。
「ならなんであいつはあんなところで寝てるんだ・・・・」
狼さんは嫌そうに呟きました。
遠くのほうに、一番上の仔豚が藁の上でお昼寝をしている姿があります。
それは藁の家というより、藁を敷いただけのように見えました。
そこで一番上の仔豚は無防備に寝ています。
これはチャンスだ、と狼さんは思いました。
「気づかなかったことにしよう」
そういうと狼さんは向きを変え、二番目の仔豚のうちを目指して歩き出しました。
「いいんだ、いいんだ。俺は気づかなかった。葛西なんて見なかった。大体、狼より強い豚がいるほうがおかしいんだ」
その時ふと、後ろから視線を感じた気がして狼さんは勢いよく振り返りましたが、一番上の仔豚さんは変わらずに寝ているようでした。
「気のせいか・・・」
そういって狼さんは、足早に二番目の仔豚のうちに向かいました。
二番目の仔豚さんの家は木の家です。
一番目の仔豚と違って、二番目の仔豚さんはちゃんと中にいるようでした。
しっかりと組まれた木の家を前に、狼さんはどうしようかと考えました。
確か原作では吹き飛ばしたような気もしましたが、狼さんにはそれは無理でした。
考えながら近づくと、なんと気なしに軽く蹴ってみました。
すると、大きな音を立てて木の家は崩れてしまいました。
「えっ・・・・!?なんでっ!??・・・・・・・おいリン、大丈夫か!?」
地響きの音を立てながら崩れた木の家の中には二番目の仔豚さんがいたので、狼さんは急いで丸太をどかし始めました。
普通なら即死の気もしますが、二番目の仔豚さんは悪運がよかったので生きていました。
下のほうからうめき声とともに、丸太を掻き分けて二番目の仔豚さんは起き上がりました。
「いってえー!!!なにすんだ坂本!」
「悪かった、大丈夫か?」
「いてて、こぶが出来ちまった」
普通なら死んでる、とは言わないでおきました。
「けど俺、軽く蹴っただけだぜ?それで崩れるなんて、釘が悪いんじゃねえの?」
「釘なんか使ってねーよ」
二番目の仔豚さんは平然とそういいました。
狼さんは非常に嫌な予感がして、恐る恐るたずねました。
「じゃあ、何で止めてたんだよ」
「これ」
そういって二番目の仔豚が差し出したものは、スティックのりでした。
狼さんは眩暈がしました。
「リーンー!どこの世界に家をのりで造る奴がいるんだ!!!」
「これしかなかったんだよ」
二番目の仔豚は悪びれずに答えました。
「なあ、お前が狼なのか?」
「そう」
「嘘だろォ!俺ゼッテェ葛西だと思ってたのに」
叫ぶ仔豚に狼さんはまったく同感でした。
「あいつは豚やってるだろ」
「一人二役でやるんじゃねえの!!?」
「さすがに、自分で自分を襲うのは無理だろ」
狼さんがそういうと、二番目の仔豚さんは何か重要なことに気がついたようです。
「お前、襲ったのか・・・・・?」
こわごわたずねられて、狼さんは首を横に振りました。
「じゃあどうしたんだ」
「寝てたからそっとしといた」
「気づかれなかったのか?」
一番上の仔豚さんは気配にとても敏感なのです。
「狼より豚のほうが気配に敏感なんて間違ってる・・・」
「そーだな・・・・でも大丈夫かよ?自分だけのけものにされたなんて気づいたら、葛西の奴・・・・」
そこから先は恐ろしくて口に出せません。
一番上の仔豚さんは、仲間はずれにされると暴れだすのです。とても強いので、お母さん以外は誰も止められません。
「お前ならあいつを襲えるか?」
苦渋に満ちた声で狼さんが尋ねると、二番目の豚さんは勢いよく首を横に振りました。
「そんな恐ろしいことができるか!」
「だよな・・・しょうがないんだ、あいつが豚なんてミスキャストなのが悪いんだ。俺は見なかった。葛西は見つからなかった。そういうことにしておこう」
狼さんと豚さんは顔を合わせて深くうなずきあいました。
「じゃあ、俺は西島のところに行くから」
「ああ。お湯はぬるめにしといてくれって言っといてくれ」
そういうと、豚さんと狼さんは手を振って別れました。
夜になりました。
朧月の優しい闇の中、狼さんは三番目の子豚さんのうちにたどり着きました。
三番目の子豚さんの家はレンガのおうちです。
「西島なら大丈夫だよな・・・」
そう呟きつつ、狼さんは軽く撫でるようにレンガのおうちを殴ってみました。
びくともしません。
今度は思い切り蹴ってみました。
それでもびくともしません。
レンガのおうちはしっかりとしていて、外側からでは揺らぎもしないのです。
「よかった。まあ、西島ならのりで家を造るわけがねえもんな」
仕方ないので狼さんは、唯一開いている煙突から入ることにしたのです。
「おい、本当に本当に、坂本なんだろうな?」
「しつけーな、葛西だったら俺がここにこうしていられるわけがねえだろ」
レンガのおうちの中、暖炉にあたりながら、二人の仔豚さんはやってきた狼さんにおびえていました。
「ううう、胃がいてェ・・・・これでもし葛西が来たら、一生うらんでやるからなぁ・・・」
「だから坂本だっつってんだろっ!!」
三番目の豚さんがお腹を抱えてうずくまり、二番目の豚さんがお茶を片手に叫んだとき、煙突から声が聞こえました。
「おーい、西島、リーン。聞こえてるかぁ?」
「坂本ォ!!?本当におまえが狼なんだなあ!?実は葛西だったりしないんだな!?」
三番目の仔豚さんは、恐怖のあまり泣き出しそうな声でした。
「だからー、葛西は豚だろー」
返ってきた穏やかな声に、三番目の仔豚さんは心底ほっとしたようでした。
「お湯大丈夫かー?」
「大丈夫だ、ぬるめにしてある。飛び込んでいいぞー」
「じゃあいくぞー」
かけ声とともに煙突に飛び込んだ狼さんは、暖炉に置かれていた熱いお鍋に落ちてしまいました。
本来ならば、物語はここでおしまい。
「あー、終わった終わった」
「西島、着替え貸してくれ」
「あ、そこのソファのうえにあるやつ着ていいぞ」
狼さんと二匹の仔豚さんは、和やかな雰囲気の中お話をしていました。
「腹減った・・・なんか食わせてくんねえ?」
「坂本、その耳と尻尾ってどうなってんだ?」
「うわっさわんな!くすぐったいんだよ!」
「坂本ー、チャーハンでいいかー?」
「なんでもいー」
狼さんはぬれてしまった服を着替えて、子豚さんの作ってくれたチャーハンを食べようとしました。
その時。
ガーンというか、ゴーンというか、なんというか重い音がレンガのおうちに響き渡ったのです。
「「「・・・・・・!」」」
三匹は顔を顔を見合わせました。どの顔も引きつっています。
「まさか・・・・・」
狼さんがうめくようにいうと、二番目の仔豚さんが精一杯明るい声で言いました。
「だ、だいじょうぶだって・・・・ここはレンガなん」
だから、といい終わる前に、レンガが突き破られて足が覗きました。
「うわぁ・・・・・」
「あああああ」
破壊音が響き渡ります。
三匹がうめいている間にも、レンガの壁は次々と蹴り破られていきました。
大きな石を投げつけたところであかない穴が、蹴りだけでどんどん大きく開いていきます。
そうして、大きな大きな穴があいて、外がよく見えるほどの穴があくと。
そこに、一番目の仔豚さんが立っていました。
朧月夜の、優しい優しい闇を背負って、一番上の仔豚さんは口の端だけで笑うと言いました。
「こんばんは、狼さん」
風が、吹き抜けました。
狼さんはスプーンを落とすと、回れ右をして一目散に逃げました。
ですが、一番上の仔豚さんはその後ろ襟を掴んでしまいました。
「ぐえっ・・・・・」
狼さんはカエルのつぶれたような声を出すとぐったりしてしまい、そのままずるずると引きずられていきます。
一番上の仔豚さんは狼さんを捕まえると、兄弟の仔豚たちには目もくれずに、穴から出て行きました。
狼さんを引きずりながら。
大きく開いた穴を見つめて、残された仔豚たちは虚ろに笑いました。
「ミスキャストだと思ったけど・・・・」
「ちがったな・・・・」
蹴りでレンガの壁を突き破るような奴が狼でなくてよかったと、仔豚さんたちは心からそう思いました。
どんどん葛西の性格が壊れていっている気がします・・・・
かといって弱くしようとすると、受け臭くなってしまうんですよね。
壊れているのは、私の頭か。
三匹の仔豚は、原作をよく覚えてないんです。よく覚えているのは、「今日から俺は」で三橋が語ったやつ(笑)