王様ゲーム 2
「はい、引いてー」
地獄の鍋からポッキーを引くような気持ちで、何回目だかわからないゲームが始まった。
散々虐げられた彼にも、ようやく女神が微笑んだらしい。
「ん〜なんしよーかなあ・・・」
ひどく楽しげに、「王様」と赤くかかれた紙をひらひらさせるリンに、嫌な予感がして坂本はいった。
「下ネタはやめろよ。男しかいねーんだからな」
「くっくっく。だから楽しいんじゃねえか」
散々虐げられた恨みを晴らすかのように笑って、リンは高らかに宣言した。
「二番が三番にキス!」
言うと思った、言うんじゃねえかなとは思った。
大半の人間にとって予想通りの命令だったが、ただ一つ坂本が皆と違ったのは・・・
握り締めた紙に、はっきりと下手な字で二番。
「さーて、だれだァ?二番と三番は」
「俺違うっス!」
山中が嬉しそうに叫んだ。
となると、どちらかだ。
握り締めた紙を見つめながら、親友と胃痛もちの友人の顔を思い浮かべ・・・
せめて、せめてどうか後者であってくれと祈った。心から祈った。
しかし、坂本の祈りがかなったことはいまだかつてない。
「俺も違う」
厳かに、しかし嬉しそうに宣言した西島に、店のあちこちからどよめきが起こる。
ということは。
正道館の頭とその親友、もとい正道館で一番強い男と、一番男にもてる男。
「オメデトー!!葛西君、坂本君!!それでどっちがどっちだ!?」
「俺が三番だ」
葛西がやたらめった楽しそうに言う。
そうだろう。まだ三番ならましだろう。
「じゃー、坂本が葛西にキスだな!」
明るくはっきりいった友人がこんなに憎かったことはない。
「・・・・・いや、やっぱりそういう命令はよくねえだろ?」
「一週間俺たちの奴隷」
真顔でリンに言われて、坂本の心は地の果てまで落ちた。
なんで、なんで俺ばっかこんな目に・・・・!
助けを求めて周りを見れば、皆完全に面白がっている。
「諦めが肝心だよな、坂本」
「がんばれよー」
「カメラもってくりゃよかったな」
最後の頼みの綱として西島のほうを向けば、慰めるように言われた。
「まあ、こんなこともある」
「ほらはやくしろよ、坂本」
「リン・・・後で覚えてろよ。この恨みは必ず返してやる・・・」
お岩さん並の怨念を漂わせながら坂本は睨んだが、根が陽性のリンはにはまったく効き目がなかった。
「ちゃんと口にすんだぞ」
頭の中で百通りの罵声をいろんなモノに浴びせて葛西のほうに向き直ると、完全に面白がっているニヤニヤ笑いが見える。
「ほら、早く来いよ」
それはいつか俺がお前に言ったセリフだろう、と叫びたいのを我慢して、わずかに顔を近づける。
周りの騒ぎがいっそう大きくなるのを感じながら、坂本は自分に言い聞かせた。
(一瞬、一瞬だ。なんてことない ・・・・)
が。
どうもやりにくかった。
「お前・・・・目ェ閉じろよ」
「なんで」
「やりにくいんだよ」
「ざけんな。そんな気持ちワリィことができるか」
確かに気持ち悪い。思わず想像して嫌になった坂本は、仕方なしにじりじりと距離を詰めていく。
「さっさとしろよ、坂本」
「うるせえなっ…」
本当に、なんでこんなことになったのか。
内心泣きながら、一瞬、一瞬と言い聞かせて……顔を寄せた。
わずかに唇が掠めた。
よし!とすぐさま身を引こうとして、
「ん!!?──── んん…!!!」
がっしりと強い力で頭を押さえ込まれて、目を見開けば意地悪く笑う顔が見える。
何しやがる!!と叫ぼうとして口をわずかに開いたのが失敗だった。あごをつかまれて、そのまま口伝いにぬるめるものが入ってくる。
「ん────…!!!」
ぎゃあー!!なにしやがる!!ふざけんな!!
言葉は頭の中を駆け巡ったが、体は硬直してしまった。
葛西の舌が、坂本の口内をくすぐる。
唾液が伝わって、ぴちゃりと何だかいやらしい音を立てたところで体が動いた。
無我夢中でとにかく体を動かし、何とか葛西を引き剥がす。
「──── !!!」
立ち上がって、とりあえず葛西の頭をどついたが、とっさに声が出ない。
酸欠の金魚のように口をパクパクさせる坂本に、葛西は何もなかったかのように平然としている。
「──── なにしやがる!!!」
気づけば散々冷やかしていた周囲もシーンとしている。
まさか、そこまでやるとは思わなかったのだろう。
「なにって、キスだろ?」
「誰が舌まで入れろといった!!」
「うまかったろ」
「そういう問題じゃねえ!!!」
口をごしごしとこすりながら、叫んだ。
いまだに口の中に葛西の感触が残っている。
それでもやたらと高等テクニックのせいかちょっと気持ちよかったりするのが情けない。
「気持ちよくしてやったつもりなんだが」
「俺相手に披露すんなーっ!!この、大馬鹿野郎!!」
だが叫んだあとでしまったと思った。
「今、否定しなかったな?気持ちよかったんだな、坂本?」
「ちがっ・・・・お前ってやつはぁ・・・・!!」
しかし顔を真っ赤にして怒るのは逆効果である。
「そうか、よかったのか」
一人納得したように呟く葛西の頭をもう一度思い切りどついた。
「死ね!!」
そのまま振り返らずに店を飛び出した。
「・・・・あーあ」
「お前、やりすぎ」
だが非難の目をものともしないで軽く笑う。
それから、怒らせた親友を追って葛西も店を出た。
「悪かったよ」
「思ってもねえ事いうんじゃねえよ」
「じゃあ、も一回するか」
「葛西、殺されたいか?」
「いいや」
「・・・・ったく」
「あきらめろよ」
「お前が言うな」
一応許しをもらった葛西が、翌日、「やっぱりデキてたんですか?」と生徒Yに聞かれて怒り狂った坂本に殴られまくったというのは、よくある話。
ラブラブ・・・・?
えーと、いろいろ勝手な設定作ってますが、やっぱりドリームとして坂本はもてて欲しいです。
正道館はたぶん男子校。いい響き。