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「いたか!?」
「いない、ちくしょうあの馬鹿、一人で行きやがったな!」
今度ばかりは葛西一人では無茶だと、散々言ったのに!
「止めろ坂本!」
西島の叫び声に、リンもはっとした。
見ればすでに玄関のドアを開けている。
「この馬鹿!お前が行ったら最悪だろうが!!」
「俺が行くのが一番だ」
声だけは冷静に言い返されるが、よく見れば手が小刻みに震えている。
「おまえはここにいろ、俺がいってくる!」
「リンが行っても足手まといだ!」
「おーよ!それでもテメェが行くより百万倍ましだ!!」
言い切って外出用の上着を取った。
「リン、どうする気だ」
「連れ戻す。確かに俺じゃ足手まといだからな、闘うつもりはねえよ。西島、その馬鹿は頼んだ」
「わかった」
サングラスの男がうなずくと同時に、坂本が反発の声をあげる。
自分が行くのが一番だと、わがままでいっているのではない。根拠とちゃんとした理屈を持っていっているのに、なぜわかってもらえないのか。
苛立って坂本は叫んだ。
「俺なら死ぬことはない!」
「黙ってろ、この大馬鹿野郎!」
叫んで、リンは飛び出した。
「どけよ」
「いい加減にしろ、坂本。ちったあ冷静に考えろ」
「考えている。リンもお前も、葛西も、あいつらとやりあったら殺されるかもしれない。けど俺なら少なくとも死ぬことはない。行かせろ」
滑らかに紡ぎだされた言葉に西島はふかぶかと息を吐き出して、それから壁にこぶしを叩きつけた。
鈍い音と振動が家中に響き渡る。
「死ななきゃいいのか、坂本。俺やリンならとっくに死んでるほどの傷を負ってもお前は死なねえ、だからいいって言えんのか」
もっとも弱く、もっとも強い男は視線をそらすことなく言った。
「言う。今は言う。今じゃなけりゃいわねえけど、今は言う」
無言のにらみ合いが続く。
いつもなら、譲るのは坂本だった。基本的に甘い男だから、ぎりぎりまでは簡単に譲歩する。
それが譲らない目で西島を見るのは、ここがぎりぎりだからだ。
一緒に生きると決めたのだ。こんなところで、失うかもしれないと怯えているなんて冗談じゃない。
傷を負うのも、血を流すのも、どうだっていい。激痛に倒れても、目が覚めたときに葛西やリンが無事でいればいい。
言えば、怒られるだろう。
怒られたいのだ。
些細なことで怒られることのできる空間を、何より愛しているから。
こんなところで待っていることだけは耐えられない。
ぼやけた灯りの下、目をそらしたのは西島だった。
「…葛西を一番傷つけんのは、お前だぞ」
それでもいいのか、と問う。
たとえ命にかかわるほどの傷を負わせても、本当に葛西を傷つけることは出来ない。
あの強い男を、ズタズタにするとしたらそれは坂本が傷を負ったときだ。
「それでも、ここでじっとしているよりましだ」
「……リンを待て。あいつならうまくやる」
「行かせてくれ、西島」
静かな部屋の中で、左胸の黒い炎が燃えている。けれど、いつ消えてしまうかわからないのだ。
炎が消えれば坂本は死ぬ。それでも。この体が灰になってしまうより恐ろしいことはある。
けれど、西島は首を振った。
「駄目だ」
「俺は守られるためにいるんじゃねえ!ダチが死にかけてるかもしれねえって時に隠れて待ってるなら、俺はなんでここにいるんだよ!俺を閉じ込めて守りたいなんてぬかしたら、ダチをやめたほうがましだ…俺は葛西のところに行く」
やがて道をあけたのは、西島のほうだった。
この目をしたときの、この男を止められる奴なんていない。
漆黒の、残酷な目。
残酷に、覚悟を決めてしまったのだ。
光の祝福を受けたときも、何一つためらわず葛西を選んだように。
パラレル第二弾。
相も変わらずわけがわからん。
私的葛西坂本イメージソングは、バンプオブチキンの「ハルジオン」が一押しなのですが、この話に限ってはグレイ並みの甘々を目指しています。
・・・目指してるんです!やたらめった暗いけど、そのうち明るく甘くなるはずなんです!!
・・・・・・・・たぶん。
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