>>温和な経正兄上にかけていただこう
「おや、これは……」
経正が一門の主だった者たちとの話し合いを終えて自室に戻ってきてみると、卓の上にはきらりと光るものが置いてあった。
「どなたかの忘れ物でしょうか……?」
経正は眼鏡を手にとって、しげしげと眺めてみた。
このような物を付けている人間に心当たりはないのだが、自分が置いたわけでもないのだから、誰かが間違えておいていってしまったのだろう。
ひんやりとした硬質さに、経正はふと興味をそそられた。
誰のものだかわからないが、ためしにかけてみるくらいは許されるだろうか?
そう思いながら恐る恐る耳にかけてみると、不思議なほどそれは馴染んだ。
「不思議な心地良さがありますね……。持ち主が取りに来るまで、これをかけたまま仕事をしてみましょうか」
「ふふ、せっかくですから還内府殿にも見ていただきましょうか」